HARD THINGS

ベン・ホロウィッツのHARD THINGS,二回目読了.今回は本が付箋だらけになった.以前読んだ時から環境が変化し,多くのプロダクト・チーム・メンバをマネージする立場に持つようになったので心に残る部分が増えたのだと思う.

ここに写しながら付箋を剥がしていく.

リーダシップというのはたとえ好奇心からにせよ,人を自分の後に続かせる能力だ

好奇心をもたせるといい.常に刺激的なことを言うんだ.チームに向かって本当のことをいう.プロダクトがダメと思ったらダメ.容赦無く,潰して一からやり直しだという.


この時私は,資金を調達する際のもっとも大切なルールを学んだ.「ひとりの投資家を探せ」だ.投資しようとする投資家は一人いればよい.だから「ノー」という残りの30人は無視した方がよい.

多くの人が「イエス」という方がいいに決まっているが,ピンチの時には一人の信頼が身を助けることがある.


投資家の金を使い果たし,民間投資が得られず,景気も悪く,事業としても時期尚早な状態で悩んだ挙句にIPOによる資金集めを目指すしか選択肢がなくなりつつあるときにベンが取締役会への相談した下り

... 重苦しい雰囲気が続いた.予想通り,ビルが沈黙を破った.
「ベン,問題は金じゃない」
私は奇妙な安心感を覚えた.上場する必要はないのかもしれない.資金問題を重く考えすぎたのかもしれない.きっとほかに方法があるのだろう.
再びビルが口を開いた.「並外れた金だ」
そう,われわれは上場するのだ.

映画のようなセリフ.内容というよりは,やりとりがかっこいいのでメモっておく.


会社の生き残りをかけて,これでまでのクラウドサービス事業からコア部分のソフトウェアを切り出し,ソフトウェア開発会社に変更する場面

最後に経営陣を刷新する必要があった.会社にはソフトウェアの経理を知らないCFO,ソフトウェアを打ったことがないセールス責任者,われわれの市場を知らないマーケティング責任者がいた.いずれも元の仕事では優れた人材だったが,新しい仕事に就く資格を持っていなかった.彼らが去るのを見ることはつらかったが,必要なことだった.

勝つためにはふさわしいリーダシップチームが必要だ.スキルセットの合わない人事異動を部門間でくるくる回しているだけではいずれ全ての部門が弱体化する.


どうしても切られてはいけない契約について,顧客側責任者であるフランクとのやりとり

フランクは,今すぐわれわれのソフトウェアを撤去し,全額返金を要求するつもりだと明かした.紛れもなく本気だった.アンソニーは冷静さを保ち,フランクの目を見ながら言った.フランクさん,おっしゃる通りにするつもりです.お話はよくわかりました.これはお互いにとって最悪の時間です.電話を貸していただければ,ベン・ホロウィッツにあなたの指示を伝えましょう.しかしその前に,一つ伺いたいことがあります.弊社がこれらの問題を修正すると保証したら,どれだけの時間をいただけますか?

ギリギリの場面で食い下がり,最後の賭けを仕掛ける.怒っている顧客相手の交渉として素晴らしい.


ほとんどの取締役はサイコロを振って新しいCEOを雇うよりも,会社を売却する方をずっと好む

日本の大企業ではこういう考え方ができない.今うまくいっているビジネスに対して,幹部が「10年後を見据えた計画は?」などといって投資の邪魔をする.その幹部は10年後どころか数年後にはもう会社にいないにも関わらず.本当に10年後が心配だと思うのなら,無理にそのビジネスを持続させる必要などない.売れる時に事業ごと売っぱらえばいい.


正しい製品を見極めるのはイノベーターの仕事であり,顧客のすることではない.顧客にわかるのは,自分が現行の製品の経験に基づいて欲しいと思っている機能だけだ.イノベーターは,可能なことは全て取り入れられるが,顧客が真実だと信じていることを無視しなければならないことも多い.つまりイノベーターには知識,スキル,そして勇気が必要になる.時として,創業者だけがデータを無視する勇気を持ち合わせていることがある.

他人にプロダクトに関する重要な判断を任せてはいけない.そのプロダクトについては自分が一番知っているはずだ.知っていなければならない.


私がエンジニアとして働き始めた頃に学んだ教訓は,客観的な判断は,コードの一行目を書くまでしかできないということだった.その後の全ての決断は感情的になる.

正しい.自分の作ったソフトウェアに感情移入してしまって,新しい世界を見ることができない人が私の周りにもいる.


スタートアップのCEOは確率を考えてはいけない.会社の運営では,答えがあると信じなきゃいけない.答えが見つかる確率を考えてはいけない.とにかく見つけるしかない.確率が10に9つであろうと1000に一つであろうと,する仕事は変わらない.

なんかすごい.


あらゆる人間のやり取りにおいて,必要なコミュニケーションの量は,信頼のレベルに反比例する.次の状況を考えて欲しい.私があなたを全面的に信頼していれば,あなたの行動について何の説明もコミュニケーションも必要ない.なぜなら,あなたがすることは,私にとって最大の利益を生むからだ.逆に私があなたを全く信頼していなければ,いかなる会話,説明,推論も,私に何の影響も及ぼさない.なぜなら,あなたが真実をいっていると思っていないからだ.

全てのコミュニケーションはこの両極端な例の幅のどこかに落ち込む.自分のチームのコミュニケーションがどこに落ち込むかでそのチームの生産性・やりがいは大きく変わる.


レイオフについての下り

CEOがレイオフするのは会社が計画を達成できなかったからだ.個人の業績が問題なら別の手段をとるはずだ.失敗したのは会社の業績だ.この区別は決定的に重要である.


(中略)


CEOが失敗を認めることは大したことではないと思うかもしれないが,実は大したことなのだ.

日本人にはlay off(会社の失敗の結果)とfire(個人の能力不足や怠惰の結果)の違いがわかっていない人も多い.そもそも人が切られないのでこれらに馴染みがないのだ.ただ,業績の悪い部門ごと別な業務を始めたり,仕事のできない人を窓際に追いやるなど.実質的なlay offやfireはあるはずだ.それがlay offであるときに自分の責任だと口にする人は少ない.そう口にしない人が上に上がるほうが一般的だ.


幹部の解雇

あなたの雇用プロセスに恐ろしい欠陥がない限り,幹部の解雇に至った理由はおそらく他にある.このレベルの採用になると,ほぼどの会社でも専門知識,同期,実績で選考している.そう,CEOがマーケティング責任者をクビにしなければならない理由は,彼がダメだからではなく,あなたがダメだからだ.

国内・国外にてこれまで複数の会社で多くのダメ幹部を見てきたしそいつのために働いてきた.ダメ幹部の破壊力はすさまじいことは身をもって知っている.一方で,その幹部を採用した人が自分の責任だと感じている気配はいちども感じない.また,大きい会社では一部門の失敗に対してCEOはそれほど関心がない場合もある.


解雇される人の自尊心を保つ

「ベン,きみは彼に仕事を続けさせることはできないが,彼の自尊心を守ることは,間違いなくできるんだよ」

望む望まないに関わらず,何かにチャレンジしている環境では,誰かに戦力外通告することがあるだろう.肝に命じておきたい.


部下からの報告への反応

この架空のCEOはほぼ全てのCEOと同様に,ポジティブな指標に対してのみ行動を起こし,ネガティブな指標に対しては,説明を探すだけだ.


(中略)


もし,誠実な社員がなせCEOに嘘をつくのか不思議に思っているなら,それは違う.その社員はあなたではなく,自分自身にウソをついているのだ.
そして,もしあなたが彼らを信じるなら,あなたも自分にウソをついている.

それが,誠実でない社員からの報告なら尚更だ.気をつけたい.


たとえ失敗の理由がどんなに立派でも,投資家のお金は一ドルも守れないし,社員ひとりの職も救えないし,新しい顧客を一人連れてくることもできない.あんたが会社を畳んで破産宣告する時だって,少しも気分をよくしてはくれない.
自分の惨めさを念入りに説明するために使う全てのエネルギーは,CEOが今の惨状から抜け出すため,一見不可能な方法を探すために使う方がはるかに得策だ.やればよかったと思うことには一切時間を使わず,全ての時間をこれからきみがするかもしれないことに集中しろ.結局は誰も気にしないんだから.CEOはひたすら会社を経営するしかない.

言い訳で時間とエネルギーを無駄にしてはいけない.


あなたがクビにした社員は,自分が職務上何を期待されていたかを理解していたか?そしてその期待を自分が達成できていないと理解していた,とあなたは確信できるか?

自分の期待を伝えずしてその人は評価できないはずだ.期待がしっかり伝わっていないのなら責任は自分にある.


実際,大企業の有能な幹部の多くは,四半期に新しいプロジェクトが3つあったら,多すぎると言うだろう.その結果,大会社の幹部は割り込み駆動型になりがちだ.
対照的にスタートアップの幹部の場合,自分が仕掛けない限り何も起こらない.会社の立ち上げ時には,一日に8から10のプロジェクトを処理できなければ,会社はとまってしまう.
大きな会社と小さな会社でもっとも大きく違うのは,経営している時間と,創造している時間の長さだ.


ツー・イン・ザ・ボックス

傑出した二人の社員がいて,論理的にはどちらも組織図の同じ役職に適合しているような時,あなたはどうするだろうか?
(中略)
そこであなたはツー・イン・ザ・ボックスという名案を思いつき,わずかな経営的負債を抱える(中略)しかし残念ながら,あなたは非常に高い利子を払うことになる.
(中略)エンジニア一人ひとりの仕事はより難しくなる.(中略)しかも,あなたは誰が最終責任を持つのかをあいまいにしてしまった.
(中略)
いずれの場合も本当に大きな代償は,時間とともに,事態は悪化していく傾向にあることだ.(中略)あなたが苦しい決断をし,リーダを一人にして負債を一括返済しない限り,エンジニアリング部門は永久に腐ったままになる.


フィードバック

CEO:会社にきた時はできるやつだったのに,いったい何があったんだ?
マネージャー:彼はやるべきことをやっていません
CEO:そのことを本人にはっきり伝えたのか?
マネージャー:はっきりと,ではなかったかもしれません


経営的負債を頑として避ける

私が知る,真に優秀で,真に経験あるCEOたち全員に共通する重要な特徴がある.彼らは組織的問題に対してあえて困難な答えを選択する.全員に同じボーナスを渡して丸くおさめるか,実績を強く反映した報酬を与えてことを荒立てるかという場面に立ったとき,彼らはことを荒立てる.(中略)なぜか.それは優秀なCEOは以前,経営的負債を支払った経験があり,二度と同じ失敗はしたくないからだ.


社内政治 - 政治性の定義

自分の能力による会社への貢献以外の要素で,地位向上を得ようとする全ての行動を指す

「君の給与は他の社員と同様の手続きで決定される」「君の異動は」「昇格は...」同文.全てにおいてそうなっているべきである.例外は社内政治への強烈なインセンティブを与える.


正しい野心

管理職チームが「正しい野心」を持った人々で構成されることは,決定的に重要だ.その点に失敗した時の他の社員への悪影響はこの上なく深刻だ.管理職が自分のキャリアを会社の成功より上位に置くのを見れば,部下は「どうして長時間残業してまでボスのキャリアの成功をたすけねばならないのだ?」と考えるようになる.


ピーターの法則

階層的組織において有能なメンバは次第に昇進していく.しかし遅かれ早かれ,メンバーは自分の能力の及ばない地位に達してしまう(無能レベルに達する).そうなるとさらなる昇進は望めなくなる


個人面談での質問

・われわれがやり方を改善するとしたらどんな点をどうすれよいと思う?
・われわれの職場で最大の問題はなんだと思う?またその理由は?
・この職場で働く上で一番不愉快な点は?
・この会社で一番頑張って貢献しているのは誰だと思う?誰を一番尊敬する?
・きみが私だとしたら,どんな改革をしたい?
・われわれの製品で一番気に入らない点は?
・われわれがチャンスを逃しているとしたら,それはどんな点だろう?

・われわれが本来やっていなければならないのに,やっていないのはどんなことだろう?

・この会社で働くのは楽しい?

個人面談で,こういった質問をしてみたると,人は思ったよりこういったことを考えていないことがわかる.全てに問題がないように聞こえる回答が多い.そこで今後は,以下のような質問をすることにしていく.

  • 私たちのチームまたはプロダクトの理想はこうだとおもうんだけどそこにいくには何が必要だとおもう?
  • 私のあなたへの期待値はこういったことなんだけど,これを達成するために必要なことはなに?
  • そのための課題・問題はなんだろう.
  • それにはどのようなサポートが必要?


フィードバック

  • 権威をもて - 内容に強い自信をもてるフィードバックを与えよ.相手の社員の感情を和らげようとする言葉を加えてはならない.叱責を別のものにごまかすことはできない
  • 正しい動機からフィードバックを与えよ - 相手の成功を助ける.失敗を願うからではない.あなたは味方だと感じるかどうか
  • 単刀直入であれ









ヤクの毛を刈りにいってきます

人生はだいたいヤクの毛刈り

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